月の雫 -君と歩む彼方への道-
にしても――


心を切り離すだって?


「……心を切り離すって、どうやって?」


オレは、シルヴァイラの背中に我ながら弱々しい声を掛けた。

シルヴァイラは振り向きもせずに答える。


「目の前の事実を事実としてだけ見るんだ。


たとえば食べ物は食べ物。

卵のスープなら卵のスープだけでしかない。

おいしいかおいしくないか、そんなのは個人の主観にすぎない。

それをおいしいと思ったなら、おいしいと思った気持ちを客観的に見るといい。


そして、それは、事実とは違う、単なる自分の心が感じたことだと認識するんだ」

「……」

「それができれば、気温が高かろうが、食事がマズかろうが、何の問題も生じない」

「……」


難しいことを言うんだな。



「――やってみる」


オレはそれだけ言った。
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