月の雫 -君と歩む彼方への道-

3.語られる過去

シルヴァイラは唇を噛んで、金の目で上目遣いにオレをじっと見ていた。


かと思うと。

薄い唇がわずかに開いて、いつもより小さなかすれ声が隙間から漏れた。


「……最初におまえに与えたウソの記憶、覚えてるか」

「ああ」


忘れるわけもない。



「あれは――ぼく自身の記憶なんだ」


「……何だって?」


「3つか4つくらいの頃だったと思う。

ぼくの父さんはひどい酔っ払いで……

普段は普通なんだけど、酔っ払うと人が変わったようになって、暴力をふるったりして、それはそれはひどかったんだ。


あの日――

母さんはいつものようにべろんべろんに酔っ払った父さんをたしなめた。

そしたら、父さんはそこにあった包丁をつかんで、母さんをぼくの目の前で刺したんだ」

「……」

「母さんは胸から噴水のように血を流して、あっという間に、声もなく死んだ。


それを見て、ぼくは………」
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