月の雫 -君と歩む彼方への道-
(オレ自身の心の壁をやっつけるのに時間がかかったんだ)


言い訳をするオレに、シルヴィの小さく笑うような声が返ってきた。


(そうそう。

そこを超えないといけないんだ。


だから、こっちは心の壁を作る方と違って、額を合わせてハイどうぞ、ってワケにはいかない。

自分で何とかしなくちゃいけないんだ)


(……なるほどな)


こいつ、本当に天才だな。


(でもすごい壁だった。

自分であきれたよ)


オレはそう言いながら、ついついため息を吐いていた。


(……そうか?)


返ってきたのは、予想に反して、かすれたかすかな笑い声。


(ぼくの見る限り、ここの研修生で一番壁が薄かったのは……)

(うん)
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