月の雫 -君と歩む彼方への道-
「シルヴァイラやルカや……レイジュラの記憶を共有して、心が混ざり合ったのは、オレにとって衝撃的な体験だったんだ。


人の過去や苦しみを知って、相手を理解して受け容れて、相手と同化していく。

そのことで、相手との距離も区別もなくなって、相手と溶け合っていく。


相手が自分そのものに思えて、愛せる。



――それは、オレには信じられないくらいの喜びだったんだよ、じいさん」


「……」


「それに、ルカやレイジュラや、シルヴァイラや……

何人かの心の痛みを体験してオレが感じたのはな。

第三者として客観的に見ることができるってことなんだ。


本人はそこでもがいていても、外から見ると、そこから抜け出す道がよく見えたりする。



オレももうすぐ16だし、そろそろ自分の進むべき道を決めてもいい頃だろ。



おこがましいかもしれないけど……

オレは、人の悩み苦しみを理解して、より多くの人と溶け合って、相手を救う方向で、自分のこのささやかな力を使えればって思ってる」


「……」
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