月の雫 -君と歩む彼方への道-
「――そもそも救えるのかどうかすら、わからないけどな」


オレは肩をすくめた。


「でも、相手の思いを受け止めるだけでも、楽になってもらえるんじゃないかな、なんて思うんだ」


「シレン………」


「シルヴァイラと一緒にいれば、シルヴィにいろいろ教えてもらえるし、成長できるっていう確信があるんだ。


研修所で机に向かって何かを教わるってだけが勉強じゃないし。



オレにとってこれは、何かの放棄でもあきらめでも、後退でもない。

前向きな選択なんだよ、じいさん」


「……」


じいさんは無言のまま、複雑な目でオレをじっと見ていた。





長い長い沈黙の末。



「シレン、結論を急ぐな。


じっくり考えた上の結論をまた聞こう」



じいさんは、ゆっくりと、絞り出すように、それだけ言った。





でも、もうオレの心は決まってた。
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