月の雫 -君と歩む彼方への道-
いくら悲しいからって、こいつの前で泣くなんて。

オレもまったくどうかしてる。



オレは恥ずかしくて死にそうだった。

穴があったら入りたいとはこのことだ。




「おい、大丈夫か」


あきれたような、かすれ声が降ってきた。


「おまえ、それでも本当に魔道士とやらの卵なのか?

無防備すぎる」


くっくっくっと、くぐもったいやみな笑い声が薄い唇から漏れる。


「落ち着いたか?


――安心しろ。

おまえのお父さんはお母さんを殺したりしてない」



(……え?)
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