月の雫 -君と歩む彼方への道-
「……父さん!母さん!

ねぇ、今どこにいるの?


会いたい、会いたいんだ……」


「わたしはいつも、おまえとともにいるよ」


「父さん!」


「シルヴァイラ、愛しているよ」


「父さん!母さん!」



村人たちの蜃気楼へ、シルヴァイラがすがるように手を伸ばすと。


蜃気楼は、じわじわと空間へ溶けていった。



最後に、シルヴァイラのお父さん、お母さんの、やさしい微笑みだけが空間に残り。

それもやがてうっすらと空に消えていった。






ゆがんだ空間は少しずつ元へ戻っていき――


やっと立ち上がれるようになったオレが、くずおれたシルヴァイラを抱き起こすと。


シルヴァイラはオレの胸にすがって、長いこと、ただ子どものように泣いた。
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