月の雫 -君と歩む彼方への道-
「まだわからないのか?

さっきのは、ぼくがおまえに植え付けたウソの記憶だ。

もう消えたろ?


……まだ消えてない?」


怪訝そうに細い眉を少し寄せて。

オレを金の目でじっと見ると、ふと目を閉じて人さし指を小さくくるんと横に振った。



途端に、オレの心の中の何かがぷちっとはじけて消えた。



(あ)



(ああああ)




――そうだ。


うちの母さんは巻き毛じゃないし、父さんは酔っ払ったりしない。



てか、母さん普通に健康に生きてるし。
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