天使のような微笑で
 握手会が終わり、今日の仕事はこれで終わり。
 
 またマネージャーが運転する車に乗り込み自宅へ帰った。

 自室に入ってすぐにパソコンの電源を入れる。
 目的は彼女の日記を読むため。

 あの時送ったメールの返事は来ない。
 不安は積もりに積もって、心が押しつぶされそうだ。

 彼女の日記には今日の出来事が書かれていた。
 
 今日のために、昨日洋服を買いに行った事。
「大好きな芸能人」に会うため、何度も何度も試着をした事。
 今日、会場へ行ったら、ものすごい大勢のファンの人たちが集まっていて驚いた事。
 綺麗な子や可愛い子を見つけては、握手会に参加する事にちょっとだけ戸惑った事。
 俺と握手をするまでの間、ずっと緊張して、手に汗をかくから何度も何度もウェットティッシュで拭いて順番を待っていた事。
 そして、握手をした時とても緊張した事。

 淡々と綴られていた。

 日記というより何かのレポートの様で、彼女の気持ちが全然伝わってこない。

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