ナツの思い出
午後になりお祭りへ行く時間が近づいてきた頃。


私はお母さんに頼んで浴衣を着せてもらった。


お母さんとは結構仲がいい私は
浴衣を着せてもらいながら色々な話をしていた。



あたしが一通り話した後でお母さんは

「めずらしいわね、
真梨那が浴衣着るの。」

と言ってきた。


私基本的に浴衣嫌いだからな。

動きづらいし。


でも翔が浴衣好きって言うから、今年は浴衣にした。



私はあくまでも冷静を保った状態で答えた。

「そうだね、
かなり久しぶりだね。」


お母さんは少し考えて、

「彼氏でもいるの?」

と聞いた。


私は思わず顔が赤くなるのを自分でも感じた。


それまでドキドキしている心の中を
悟られないよう必死に平常心を装っているつもりだけど、

不意にかけられた言葉には
頭の中で反応するには時間がかかって、
戸惑ってしまった。


もう、バレたんだろうな。


もともと嘘をつくのが苦手な私は
この顔のほてりをごまかすような
上手い嘘のつき方の技術なんて持ち合わせていない。

話すしかないんだろうな。


別に隠したい訳じゃ、ないけど。

なんとなく、恥ずかしい。
< 6 / 37 >

この作品をシェア

pagetop