不機嫌な果実


大きな目の周りはアイラインでくっきり縁取られ、長い睫毛にはマスカラが丁寧に塗られている。 


媚(こび)を含んだような潤んだ眼差しで、長身の相澤を見つめる美和。


パールピンクのグロスをたっぷり塗った美和の唇。


男からすれば、即座に奪いたくなる魅惑の唇だろう。


あの唇に触れたい――。


自分の思うがままにしたい――。


そう思う男が五万といるはずだ。


半開きになった唇も、恐らく彼女の計算なのだろう。


少なくとも、男に隙を与えるための要素には間違いない。




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