初恋のキミへ。


次の日。

私はユウトと別れた。

「ごめん。」

それだけしか言わないユウトに苛立ちを覚えた。

だけど大好きなユウトを悪者にはできなかった。

それから亜紀とユウトは付き合ったとタクミから聞いた。

「もっといい女は沢山いるし」

そう呟くタクミはやっぱり少し寂しげだった。

だけど私はタクミに

「お互い、幸せになろうね。
タクミは今まで通り、
私と友達でいてくれる?」


そう言った私に


「当たり前だろ?
お前は最高の友達だよ」


って言って笑いかけてくれた。

それがとても嬉しかった。

その日の夜はタクミが幸せになれるように強く強く願った。

亜紀とはあれから口を聞いていない。

これでよかったんだと思う。

そんなときに父親の転勤が決まった。

絶妙なタイミングと言っていいほど助かった。

タクミとは今でもたまにだけど連絡を取ってる。

「なんかあったらいつでも連絡してこい。
いつでも帰ってこいよ」

毎回そう言って電話を切るタクミ。

今は好きな人ができたらしい。

私はタクミより喜んだと思う。

「付き合えるといいね」

と言うと少し照れたように「おう!」と返事をしてくれた。

私はまだ、ユウトを忘れられない。

私だけ止まったまま。

だけど…人を好きになることに臆病になってしまった。

裏切られるのはもう嫌だから。

だけど…
ユウト以上に好きになれる人はいなかった。

これが一番の理由だった。
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