忘却心 第一幕 月下章
ばさり。階段を上ると今まで遮られていた光が一斉に顔を出した。眩しい…。
一瞬目をそむけるようにして頭にかぶっていた布を取り払う。
すると男の顔が日の光に照らされて姿を現した。
褐色の肌に白い短髪の髪。瞳はギラギラと猛獣の如く鈍い光を放つ鳶色。
この国の民族特有の特徴を持った男。
そして男は一度自分が上がってきた階段を一括すると、すっと右腕を階段に突き出しおもむろに空中を切ったと思うと音もなく階段は空気に溶けるようにジワリジワリと消えていった。
消えていく階段を睨むようにして暫く眺めるとすっとその場を後にするように背を向けて行った。
「あぁ、バンナ様。ご機嫌麗しゅうございますな。」
「……ヴェクトル、様…。」
長い長い廊下を進んだ先、行き止まりに近い角を曲がると人のいい笑みを向けた青年が此方を見ていた。
「執務長の貴方が…何故ここにいらっしゃるのですか…。」
「あの化け物はそろそろ吐いたのかと思いましてね…私が直々にと思いまして。我が主君…ガーヴァネル国王が落ち着かないのですし。」
にこりと人のいい笑みを向ける20代の青年は高くに結い上げた白髪を揺らしながら小首を傾げる。彼をよく知らない者からみると、好青年の如く柔らかなその笑みに惚れぼれとしてしまうだろうが、あいにくよく見知った者からすると薄気味悪いものでしかない。
「……生憎だが、ご期待に添えない。」
口元を歪ませながら歯切れ悪くそう伝えると彼は更に笑みを深くした。
「そうでございまするか……。まだ時間はあります故…じっくり絞ればよろしいでしょう。」
「ガーヴァネル以外にあの招待状が届いていなければ…の話ですが。」
にたりと意地の悪く目元をゆがめて見つめると、バンナと呼ばれた男は顔をそむけるようにしてその場を後にした。
一瞬目をそむけるようにして頭にかぶっていた布を取り払う。
すると男の顔が日の光に照らされて姿を現した。
褐色の肌に白い短髪の髪。瞳はギラギラと猛獣の如く鈍い光を放つ鳶色。
この国の民族特有の特徴を持った男。
そして男は一度自分が上がってきた階段を一括すると、すっと右腕を階段に突き出しおもむろに空中を切ったと思うと音もなく階段は空気に溶けるようにジワリジワリと消えていった。
消えていく階段を睨むようにして暫く眺めるとすっとその場を後にするように背を向けて行った。
「あぁ、バンナ様。ご機嫌麗しゅうございますな。」
「……ヴェクトル、様…。」
長い長い廊下を進んだ先、行き止まりに近い角を曲がると人のいい笑みを向けた青年が此方を見ていた。
「執務長の貴方が…何故ここにいらっしゃるのですか…。」
「あの化け物はそろそろ吐いたのかと思いましてね…私が直々にと思いまして。我が主君…ガーヴァネル国王が落ち着かないのですし。」
にこりと人のいい笑みを向ける20代の青年は高くに結い上げた白髪を揺らしながら小首を傾げる。彼をよく知らない者からみると、好青年の如く柔らかなその笑みに惚れぼれとしてしまうだろうが、あいにくよく見知った者からすると薄気味悪いものでしかない。
「……生憎だが、ご期待に添えない。」
口元を歪ませながら歯切れ悪くそう伝えると彼は更に笑みを深くした。
「そうでございまするか……。まだ時間はあります故…じっくり絞ればよろしいでしょう。」
「ガーヴァネル以外にあの招待状が届いていなければ…の話ですが。」
にたりと意地の悪く目元をゆがめて見つめると、バンナと呼ばれた男は顔をそむけるようにしてその場を後にした。