生きる
麻酔で眠りについた時生に、手術は長くも短くも感じなかった。
手術室の前に置いてある長椅子に座りながら、葵は手術を終えるのを待っていた。
神様に祈るかのように、手をギュッと握っている。
時生は幸せでもあったが、不幸でもあった。
小さな頃に交通事故で両親と死別し、それから孤独の人生を過ごしてきたのだ。
それを知っている葵は、これ以上の不幸を時生に与えたくなかった。
何もできないが、強く願うことはできる。
葵は必死だった。


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