71
忘れもしない 5月の後半
ある日の午後4時。
電話で涼くんと会う約束をした。
電話で話すのは生まれて初めてだった。
もちろん、家の電話。
会話もバレンタイン以来だから、かなり久しぶりで・・・・・・
待ち合わせの場所は
私の町と
涼くんの町を
つなぐ橋。
近いけれど、
その橋が 2人を 遠ざけてる気がしていた。
私もその橋の向こうに住んでいたら・・・・・・
何度もそんなことを考えた。
私の家から見えるんだよ。
その橋。
ストーカー並みに
自分の部屋からこっそり見ていた。
涼くんが部活を終えて、私も部活を終えて・・・・・・
私が家につくのと同じくらいの時間に
涼くんは
あの橋を渡る。
遠すぎて、誰が誰かわからない。
涼くん以外は・・・・・・
どんなに遠くても
涼くんだけは
わかる。