左手は常闇を這う【短編】


僕の中のあの人は真実しか見ることが出来ず、堪えかねて夢の世界へと旅立ったままだ。

行方知れずとなってしまった僕を探しているに違いない。


僕の元には、あの人が残した左手首が毎晩赤いベールを長く引きずるようにして、その痕跡を重々しく、僕がそれを忘れてしまうことを拒んだままだ。




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