サイレントナイト~赤くて静かな夜~

殺害現場

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ラーメン屋「伊吹」の店主、豊城(ほうじょう)は、頭にタオルを巻いたままの出で立ちで警察の質問に答えていた。

「だから、知らんちゅうねん。
ほんの一回か二回店に来たくらいで、顔見知りでもなんでもないわ。」

背中と胸に「伊吹」と店名がプリントされた黒いTシャツは、いつもは汗で首もとから胸元まで色が変わっているのだが、さすがにすっかりと乾いていた。

「お客さんですわ。
商売やってたらね、お客さんの顔覚えるのが仕事ってもんでしょう?
いやだからね、言い方悪いけどね、その子態度悪かったんですわ。
店に入ってくるなり内装がダサイだのおっきな声で騒ぐしね、
うちで使ってる女の子達困らせて楽しんでるようなね、
まあ良くないお客さんだったんですわ。
それでとっさに知ってるって言っただけですわ。
それだけ。
事件のことなんか知りませんわ。」

ようやく警察が離れると、豊城は忌々しそうにタバコの吸い殻をコーヒーの空き缶にねじ込んだ。

4ヶ月前のあの出来事は、警察には言わない方がいいだろう。

豊城は警察がはったブルーシートを眺めながら、4ヶ月前の出来事を思い出していた。

あの時、岡嶋宗一は血だらけで動かなくなったユキオを尚も殴り続けていた。

返り血を浴びたオカジマの顔は、憎しみと悲しさが入り交じっていた。

あの時の出来事が今回の事件と重なるようなことがあってはいけない。
オカジマに、警察から変な疑いをかけさせられたくはない。
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