KEEP OUT!!

 携帯の受話部から微かに聞こえる草にぃの声。

『お~、どした?』

「あのね、紗智ちゃん今日休むから。それとわたしちょっと遅れていくから」

『は? ちょっと待てよ。じゃぁなにか? 俺、ひとりで今からの時間帯切り盛りしろってぇのか?』

「うん」

『うん──じゃねぇよ。今すでにひとりなんだぞ? 洗い物も溜まってるってのに──』

「しかたないじゃない」

『おいこら、大体なんで紗智は休み──』

「それは乙女のヒ・ミ・つ」

『はぁ? なんだよその──』

「それ以上聞いちゃダメ」

『や、ちょっ──』

「絶交するわよ?」

『あ? なんで──』

「うるさい。じゃ、しばらくお願いねぇ~」

『おいっ! ま──』


 プッ プー プー プー


「あ、あのぅ……」

「まったく、気の利かないヤツね、あいかわらず」

 間違いなく逆ギレだと思いますそれは、まゆみさん。

「わたしなら、もう大丈夫ですから──」

「みずくさい!」

「へ?」

 ずびしぃっ、と人差し指をわたしのおでこに突きつけて、

「あのね。わたし、けっこう紗智ちゃんたちのこと、好きなの」

 突然の、告白。

「でもってね。わたし、けっこう他人のおせっかい、好きなの」

 突然の、告白?

 あまりに自信満々な感じでいうものだから、ツッコミのひとつも出来ずに固まっていると、わたしに突きつけていた指をぴっ、と立てて、まゆみさんはこういった。

「“勇気”って、なんだと思う?」

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