本庁
第2章
     2
「害者の高城和哉さんは、ホシによって心臓部をナイフのようなもので刺され、留めの一発で後頭部を鈍器のようなもので殴られて殺害された模様」


 巡査部長の大出が手元にある警察手帳のメモを見ながらそう言い、淡々と捜査報告を続ける。


「関東中央監察医務院の解剖医による司法解剖の結果、致命傷は心臓を突き刺されたことによるものらしいです。後頭部からの失血もあったのですが、マル害は心臓を刺されたことで、息絶えたかと」


 合同捜査本部の中央には、警視で管理官を兼ねる香川憲正がいる。


 香川はキャリア組で、普段は本庁にいて、丸一日椅子に座ったままでも出世していく。


 現時点では未来の警視総監候補だ。


 香川が、


「君たちのさっきからの報告聞いてるけど、まるで遺体の損傷具合なんかの状況証拠ばかり言ってるだけじゃないか。もっと核心的な証拠はないのか?」


 と言ってきた。


 皆が一瞬緊張する。

< 8 / 110 >

この作品をシェア

pagetop