本庁
 管理官は三十代の青年だ。


 キャリアで入ってきているから、現場を這いずり回った経験がまるでない。


 おまけに上から目線でモノを言ってくる。


“こういう人って相手しにくいんだよな”


 捜査員皆がそう思っていた。


「管理官」


 山口がそう言って手を挙げ、立ち上がる。


「遺体が握っていた毛髪のDNA鑑定が今日の昼過ぎか夕方にも終わります。それで害者が亡くなる直前に伝えたかったことが分かると思いますので、それまでは我慢してください。ここは本庁じゃありません。あくまで所轄ですから」


「ああ、分かった」


 意外にも素直に香川が頷き、副管理官の磯野が、


「本庁のデカさんたちは引き続き捜査本部内にて待機。所轄さんは現場付近での聞き込みを重点的に行ってくれ。ホシは必ず捕まえるぞ。では散会」


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