本庁
「実はね、俺、美和子の狂言の理由が分からないんだよ」


「例の毒入りコーヒーの一件かい?」


「ああ。何で美和子はああいった真似をしたんだろうな?」


「俺は薄々理由が分かるよ。美和子は亡き父で、殉職してしまった佐田警部補の仇を討つため、警察に乗り込んできて復讐することを考え付いてたんだろう」


「つまり美和子の入庁は最初からそれが目的だったと?」


「うん。そういうことになるね。美和子が警察に入ったのは、組織のために犠牲になった父親の無念を晴らすためだろうよ」


「相当重たいものがあったんだろうな」


「ああ。美和子は警察組織に入った時点から、すでにそこまで考え付いたって思ってる。だから、ピーズファイルを真っ先に本庁のIT関係担当のデカから受け取って、それで事件を企てたんじゃない?」


「じゃあ、高城和哉さん殺害も、吉田らによる違法な積荷事件もシナリオにあったのかい?」


「うん。多分、美和子はそこまで視野に入ってたんだろうと思う。だから綿密に計算し抜いて、事件を陰で操った。もちろん美和子は高城和哉とは一面識もないし、吉田たちとも
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