桐壷~源氏物語~


腕枕をしている腕の上で、妻となった人がすうすうと小さな寝息を立てている。

細く丸い肩。

華奢で小さな身体。


長い睫毛に縁取られた大きな瞳をもう一度見たくて、柔らかな甘い唇をもう一度味わいた

くて、帝は彼女の手を取り、その甲に接吻をした。

白魚の様な指先に、自分の指を絡ませる。


今まで、これ程心が安らぐ事が、あっただろうか。

今まで、これ程人を愛しいと思った事が、あっただろうか。

今まで、これ程幸福な時間があっただろうか。


彼女が目を覚ます。

目と目が合うと、恥ずかしげにはにかんだ笑顔を見せる。

帝は、彼女の額に、ゆっくりと口づけを落とした。



「愛しているよ」



この一言を口にして。




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