ほどよい愛
「ねぇ…。もしかして、知ってた?」

「俺も、受賞者が葵の兄貴って知ったのは昨日なんだ。協会との連絡担当の結衣からもしかして…って聞かれて調べた」

「じゃ、夕べ言ってくれても良かったのに」

「内緒にするつもりはなかったんだけど、兄貴が言ってないみたいだから、俺から言うのはやめたんだ」

「……」

ごもっともな理由に何も言えなくて。

どうして透は教えてくれなかったんだろ。
考えてもわからなくて再び新聞の記事を読み続けた。

受賞を喜ぶ透のコメントがあって、私にもじわじわと嬉しさが生まれてきて、目がうるうると滲んでくる。

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