ほどよい愛
会社に入ってすぐロビーを見回し、探していた顔を見つける。

「杏奈!」

片隅の椅子に腰掛けてスケジュール帳を見ていた杏奈のもとへ行くと、心配そうに見つめる瞳とぶつかる。

「夕べ言ってた事って本気?」

「…本気…。でも、やっぱり弱気」

へへっと笑う私に苦笑しながら、杏奈は溜息をつく…。

「まぁ、相模課長は、何があっても葵の事手放さないと思うけど…」

「…そうだといいんだけど…」

「でも、自分から動く事なんて仕事以外ないのに。何かあった?」

「うん。あった」

「あったって…そんなあっさりと」

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