彼女の嘘と俺の嘘


 おれがサキにしてやれたことは骨髄バンクに登録すること、クリスマスに会ってプレゼントをあげたことくらいだった。


 サンタクロースとトナカイが夜空を飛んでいるスノードームをサキは大事そうに抱き締めていた。


 一月の成人式の日に「おめでとう!」とケータイで伝えたら「成人式に出席できないことを友達に伝えるメールをするのに忙しかった」と言っていた。


 それからサキは「怖い……」という言葉を頻繁に使うようになって、しまいには声に力がなくなり、聞き取り難くなった。


 サキはなにかを伝えたかったようだが、おれは「うん、うん……」と返事をすることしかできない。


 2月にはとうとう無菌室へ。

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