彼女の嘘と俺の嘘
『シバ、寝ちゃうのぉ?』
サキが猫なで声で甘えてくる。
シバ> そんな声で誘惑しても駄目だよ。今日の夜に備えて寝るの
『わかった。おやすみシ……バ……チュッ』
マイクから唇を鳴らす音が聞こえてきて、おれは年甲斐もなく胸の高鳴りを覚えた。
慌てて“おやすみ”の文字を打ち、お互い回線を切った。
しばらく放心状態だった。
疲れなのか高揚感なのか、相反するモノたちが、おれの心の中で混ざり合うと融けた。
額に汗が滲む。