元カレ教師


「でも最後に、伝えられて良かったです。」


「俺も1つ聞いていいか?」


「何ですか?」


「伝えたかったのは、好きだったって事?」


「いえ。」


あたしはハッキリとそう言った。


「この恋を終わりにするって事。」


「なるほどな。」


「それだけです。
…さようなら。」


あたしは鞄を手にし、彼を見た。


これで最後だと思った。


彼の目も、彼の髪も、口元も鼻筋も、首も


あたしは彼の見れる範囲の全てを見た。


「さようなら。」


あたしが聞いた、彼の最後だった。


ただ、今までに聞いた事のない程、優しい“さようなら”だった。


あたしは彼に背を向けた。


後悔は、今はしてない。


あたしはそう確信した。



< 509 / 513 >

この作品をシェア

pagetop