『契約』恋愛

雪乃なりの、俺への優しさ…?


「雪乃は、これ以上自分と一緒にいることで、佐山君を傷つけたくなくて、わざと酷いこと言ったんだよ。」


わざと…?
意味が、わからない。
雪乃といることで俺が傷つくなんて、あり得ないのに。

でも。


「なぁ、中沢。
お前は何を知ってんだ?」


悲しそうに顔を歪める中沢は、確実に俺の知らない何かを知っている。

だからこそ今だって、雪乃のために俺と話をしているのだろうから。

じっと俺を見つめる瞳が、不安げに揺れた。ほんの数秒見つめられてただけなのに、それが何分にも何十分にも感じられて…。

ごくんとつばを飲み込んだと同時に、中沢が静かに口を開いた。
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