『契約』恋愛

こらえきれなくなった涙が、ついにゆっくりと頬を伝う。
…何で泣いているかなんて、上手く説明はできないけど。先生の瞳を見つめて、もう一言だけ…


「風春は唯一、私の闇に気がついてくれた人。手を差し伸べてくれた人。
…――だから、ね。最期の最期まで、彼のそばにいたいの。」


一度は自ら離れたけれど、また歩み寄ってくれた。一緒に闇を背負ってくれた。

風春が風春の“現在”を私に捧げてくれているように、私も風春に私の“現在”を捧げたい。


「今は今しかない。
私は後悔したくない。」


未来は決して見えないけれど、“現在”は“現在”として“永遠”に存在するはずだから…

流れる涙を拭って、私は精一杯の笑みを先生に向けた。
< 239 / 286 >

この作品をシェア

pagetop