『契約』恋愛

困惑した先生の表情に、私は強く訴えかける。それに耐えかねたのか、先生の視線が私からそらされた。


「…医者として、キミの主治医として、認めるわけにはいかない。患者のリスクを高めることを、できるわけないだろう。」


苦虫を噛み潰したような表情で、そう紡がれた言葉…

確かにそうだけど、私だってここで引き下がるわけにもいかないから。


「先生、私、後悔したくないの。
自分の人生、例えどんなに短かろうが、後悔しないように生きたい。」


不意に潤んできた瞳に気づかないフリして、言葉を紡ぐ。


「あとどれくらい生きれるのかなんてわかんないし、ここにいたっていつかは終わりがくるんだよ。だからそれなら、例え少しの時間でも、ここじゃない場所で風春と過ごしたい。」


またここに戻ってきた時点で、諦めにも似た気持ちが私を渦巻いた。だからそのときに、ある程度の覚悟はできているんだから…
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