『契約』恋愛

体勢をなおして、俺がもといた位置に腰掛けると、玲奈は無言で入り口の方へと歩いていく。

そして入り口の前で立ち止まると、振り向いてゆっくりと口を開いた。


「風春。 あたし今まで、風春が本気で恋するなんて絶対あり得ないと思ってた。」


…俺が“本気”で“恋”?
あり得ないも何も、そんなのする気はないって有名なはずだ。


「だからね、風春が青木さんのこと、そんなに想ってるなんて知らなかったの。 押しきればまた、風春がそばにいてくれるかもって少し期待してた。」


俺が雪乃を想ってる?
んなわけねぇだろ。

別に雪乃なんて気にしてねぇ。
ただ雪乃は“『契約』彼女”。
どんな形であれ、今の俺の“彼女”だから、こんな気持ちになるだけだ。
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