ケイカ -桂花-
今、たろうって言った?

宮崎?・・のわけないか。

ただの偶然?よくある名前だし。

そもそも聞き間違いかもしれないし。

頭では否定しつつ、足は前へと踏み出した。

昨日あんなに早く来ていた宮崎が、まだここに来ていない、その一点だけが私の足を動かした。

コンクリの壁に張り付くように進み、壁から少しずつ頭をずらしていく。

お互いの体に腕を回して抱き合った2人。

重なっていた顔がちょうど離れた。

男の頭越しに女の顔が見える。

恍惚の表情の女。

あれは、・・・Dだ。

うそ、D?

だって、さっき教室でお弁当広げてなかったっけ?

必死に記憶を手繰っても、誰の顔もぼんやりしててよく思い出せない。
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