ケイカ -桂花-
「ばっかじゃないのー」

「あはは、私も今のはちょっとあれだけどー」

何度もそう言いながら笑いあった。

「やっぱ仕事行くわ」

ひとしきり笑うと愛人がきっぱり言って、立ち上がった。

こんな時間からなんて夜の仕事なんだ。

「またね、ハナ」

「ちゃんと化粧してけよ、愛人」

「セイちゃんはスッピンの方が良いって言ってくれてるけど?」

「その顔はヤバイだろ」

「あと、ケイ。私、愛人じゃなくてケイだから」

愛人はそう言って、手を振りながら遠ざかっていく。

フッ、愛人は愛人じゃん。

無意識に振りかえす私の手の爪には、まだ水色のペンキが詰まっていた。
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