ケイカ -桂花-
教室にはもう誰もいなかった。

当然だ。

AもBもCもDも待ってるはずがない。

担任に呼び出しを言い渡された時は、「どうしたの?」なんて心配顔をしてたけど、他に人がいなければ、友達を演じる必要が無いんだから。

そんなことより、早く行こっ。

急いだせいでカバンがイスに当たって、ガタンッと大きな音を立てて倒れた。

もうっ。

いいや、このままで、そう思って行こうとした時、不意に誰かに呼ばれた。

「桂?」

誰もいないと思ってたのに、私からほんの1、2メートルのところに人がいた。

床に座り、壁にもたれかかって。

眠そうに目をこすり、うーんと小さくうなって伸びをしている。

寝てたみたいだ。

「あ、ごめん宮崎。起こした?」

「びっくりした」

「ごめん」

「いや、そうじゃなくて、俺の名前知ってたんだ?」

「ああ・・・」

こっちこそ、宮崎が私の名前知ってたのにびっくりだよ。
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