ケイカ -桂花-
「それからのつきあいなんだ?」

「まさかっ。見ず知らずの人にもらえないよ、すっごい高いんだから」

手と首をブンブン振って否定した。

「その後よ、本当の運命の出会いは」

もったいつける様に、フフッと笑った。

運命、という言葉に心がときめいた。

それが不倫だという事も、自分の父親だという事もすっかり忘れて、続きを待つ。

だけどケイは、美しい思い出に浸る様な、どこか切ない遠い目をして、一向に話を始めない。

「運命の出会いって?」

急かした私をチラッと見て言った。

「ひみつ。大切な事は人には言わないもんよ。
大切な事は小さな箱に入れて、きれいなリボンを掛けてしまっておくの。誰にも触らせない、たとえセイちゃんにだって。私だけの物」

「ちょっと、そこまで言っておいて、それはないんじゃないの?」

アハハハッ。

ケイは、楽しそうに豪快に笑った。

その後もしつこく聞いたが、笑ってごまかすばっかりで、少しも教えてくれなかった。
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