十五の妄影(もうえい)
第七章、晋作
警察の特殊部隊を全滅させ、僕は奇妙な精神状態だった。

妄影を得た事で、力を得た。

屈強な隊員達を大勢相手しても、たった一人でねじ伏せる事のできる常軌を逸した力。

僕をいじめていた連中が感じていたとの恐らく同じであろう、優越感に満たされる。

もう誰にも怯える事はない。

誰の目も気にする事はない。

誰の顔色も窺わなくていい。

僕は僕の意思で生きる事ができる。

…その一方で。

ぽっかりと胸に穴が開いたような感覚。

こういうのは、虚無感というのだろうか。

相手を力でねじ伏せ、抵抗できなくさせた。

誰も逆らえない。

誰も僕に刃向かわない。

なのに、訳もなく虚しさを覚えていた。

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