手紙


「手紙?」

「そう、中に手紙が入ってて、びっくりして……」


その女の子はあたしの左下の下駄箱を開いて靴を取り出した。

ってことは、同じクラスなんだ……。


「ラブレターってはずはないよね。昨日入学式やったばかりだし」

「そう。だからなんだか怖くて……」


その子は少し考えてから“見せて”と言った。

怖いけど、下駄箱を開けてその手紙を取り出し、渡してみた。


「誰からか書いてないし……ん?葵?」

「あ、それはあたしの名前」

「ってことは、間違いとかじゃないんだ?あ、あたしは花音。冴霧花音(さえぎりかのん)」

「花音ちゃん……」


あたしに宛てられた手紙は封筒に包まれていて

それを開くのに少し抵抗がある。


「……とりあえず、読んでみよ?」
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