手紙


「たいと?……とりあえず、ここじゃ目立つから、移動しよう?葵ちゃん」


翼くんは、優しく背中を押してくれる。


「……もう。竜、悪いけどわたしこの子と話をしなくちゃいけないから、先帰ってくれる?あとでメール入れるから」

「わかった。気を付けて帰れよ?」

「うん、またね」


久しぶりに聞く准の声。

あの頃は、ただただ煩わしかった声。

その声は今では少し懐かしいとともに、憎らしい。


「なにがあったか、教えてくれるかな?」


大通りから少し離れたところにある公園に入って、ベンチに座った。


「ごめんね、翼くん……」

「なによ、東城くんのことでいろいろ言っておきながら、しっかり彼氏作ってるじゃない」


ズキン...。


「彼氏じゃ……ない」
< 86 / 300 >

この作品をシェア

pagetop