ナツの誘惑
待ち合わせの裏山
小さな駅のライトに照らされ、夏の虫が羽音をならす
オレと篤志の前に現れたのは
葵浴衣に髪を上げた妖美な那都
「うっわ、すんげー可愛いよ」
「ありがとー、篤志!」
手を繋いで歩く二人の横で
オレは月明かりに浮かぶ山裾を何気なく見ていた
ジリジリ ジリジリ
くすぶるような声で蝉が鳴いて
それが耳に残ると
胸の奥で変な感情が熱さを駆り立てる
もう日が沈んだ夜だというのに
その蝉は
なぜ鳴いたのか