碧の記憶、光る闇
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「きゃあ!沖田先生、その携帯に張ってあるプリクラ誰ですか?もしかして彼女?」

帰り支度をしていた和哉に音楽教師の青沼小夜子が黄色い声を掛けた。

(なんだよ今日の獲物は俺かよ)

小夜子は美人でスタイルも抜群だがそれを鼻にかけたような態度となれなれしさで、独身男性教師は皆、彼女と一線を引いていた。

小夜子の話し相手をするのはもっぱら雅彦の役で、いつも汗だくになりながら対応している。
学内の人気を雅彦と二分する和哉だが押しに弱そうな体育会系の雅彦と違って、一見学者肌で神経質なところが幸運にも小夜子の希望から外れていたらしく、これまでお誘いを受けた事は無かった。

「そんなんじゃないですよ」

「そんなんじゃないって、もしかして生徒さん?いいんですか教師が女性と一緒に写真なんかとったりして」

「沖田先生、本当ですか?駄目ですよ、行動には気をつけてもらわないと」

話を盗み聞きしていた生活指導の谷畑が困った顔をする。

先日も国語教師で野球部の顧問が19歳の卒業生と結婚し、妊娠が発覚したばかりである。予定日が11月という事で在学中から関係のあった事がばれてしまい、現在窮地に立たされていた。

「違いますよ、妹です。妹の碧」

和哉の言葉に向かいの席の雅彦がビクンと反応する。

「へええ、その方が噂の妹さんですか。先生と妹さんって仲がいいんですよね。休みの日とか一緒に買い物したりしているの見たことありますもの」

(なんだよ、見たことあるんなら妹だって知ってて聞いたのか…嫌な女だなあ)

「たまにですよ。たまに…そりゃあ兄妹ですしお互い独身だから家の買い物ぐらい一緒にいったりしますよ。妹は車の免許持ってないんだし」
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