____苺の季節____
あまりにも優しすぎる言葉。


紅林君…、あたしなんかを、そんなに想ってくれているの?


こんな、あたしを?

どうして?


幸せや、有り難さや、応えてあげられない切なさが胸に溢れて、


気づかないうちに、ポトポト涙を落としてた。


「あたし、あたし…」


「泣かないで?そんな涙を見たら、

また、抱き締めたくなっちゃうからさ…、

ありがとな」


そう言って、頭をポンポン撫でる。


あたしは、何度も首を振り、


「あ、あた…しの方こそ、
あり…がと…」


紅林君が頷きながら、あたしの涙をぬぐうと同時に始業のチャイムが鳴る。


「やっべ、急ごう」


あたしの手を引き、紅林君は走り出した。


手を繋がれて、胸がキュ…ンとなる。


真っ直ぐで長い廊下。


あたしは走りながら、綺麗な横顔を見上げてた。


時々、あたしを見て、ペースを調整する紅林君、


長くて優しい指は、教室に入る直前まであたしの手を包んでいた。


< 47 / 180 >

この作品をシェア

pagetop