____苺の季節____
教室のドアを開けると、先生がもう教壇に立っていて、

クラスメイト達の視線を一斉に集めた。


「すいません、トイレに行っていました」


紅林君が先生に言う。

先生はチラッとあたしの方も見る。


世界史の森先生は進路指導の先生でもあり、怖いと噂される人物で、嫌味のひとつでも言われるかと身構えた。


「ああ、良いから座れ…」

胸を撫で下ろし、机の間を縫うように歩くあたし。


鳴海と目があったけど、どんな顔をして良いかわからなくて、ただ、目を伏せた。

通路を挟んで隣同士の紅林君とあたしが、静かに席に着く。


鳴海が振り返り、あたし達を見てたけど、リアクション出来なくて、また目を伏せる。



胸が苦しかった。

切ない優しさを知って気づいたの。



あたしは『鳴海が好き』


やっぱり、アイツが好きなんだよ。






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