____苺の季節____
昼休みが終わっても、帰りのホームルームが終わっても、鳴海は帰って来なかった。


百合ちゃんと一緒にいるのだろうか?


色々な妄想に押し潰されるのが嫌で、


部活の時間が始まると、譜面にかじりつく様にしながら、基礎練習に力を入れた。


「杏ちゃん、どうした?

ロングトーンは8拍ずつで良いよ?

24拍ずつって気合い入れすぎ、どうした?なんかあった?」


パートリーダーの西村先輩が、心配そうに聞く。


あたし、部活の先輩や、同期から『杏ちゃん』とか、『杏』と呼ばれる様になったんだ。


「杏、少し、休憩したら?」

同期の高松 里子(たかまつ さとこ)、通称、里ちゃんも言う。


西村先輩がメトロノームを止めた。



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