光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「受験方法は、“前期選抜”ね。」




また、ボールペンが動く。



だけどお母さんはあたしの方に一度も見向きしない。



あたしの意見は聞かずに、お母さんの意見だけでボールペンは動き続けた。




「もし希望している学校があれば書いて下さい……か。佐奈、爽守(さわもり)高校でいいわよね?お母さんの出身校の。」




突然の問い掛けに、驚きながらお母さんを見た。



お母さんは、ジッとあたしを見る。



その瞳には、なんだか逆らえない気がした。




「…うん。」




3秒ほど間を空けてから、その一言だけ答えた。



お母さんは



「そうよね。」



と微笑む。




「“爽守高校”っと。」




お母さんはまた呟きながらボールペンを動かしていた。



あたしはふぅーと深く深呼吸をする。




「お母さんも通ったけど、爽守高校はいい高校よ。勉強には熱心だし、いい大学への合格率もそこそこいいしね。本当は西澤高校ぐらいに入れたらいいけど、今の佐奈の成績では難しいから仕方ないわね。でも、受験までに頑張ったら入れるのよ?」



「ふーん。」




感情のこもっていない無愛想な声で、返事をしておく。




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