光を背負う、僕ら。―第1楽章―
その笑顔に、ホッとした。



張り詰めていた気持ちが、楽になったかのように。




「ただいま。」




おかげであたしの鼓動は正常に戻っていたし、平然と挨拶に答えることも出来ていた。



だけど、気を緩めてはいけない。



今から、ちゃんと聞かなくちゃいけないことがあるのだから。




「お母さん、ちょっと話せる?」




二人でリビングに入った時、あたしは唐突に切り出した。




「何?大事な話?」




さすがにお母さんも、緊迫した表情のあたしに気付いたのだろう。



声がすごく、真剣だった。




「…うん。大事な話。」



「わかったわ。じゃあ、部屋で着替えて来なさい。それからゆっくり話せばいいから。」



「わかった。」





あたしはそそくさと、自分の部屋に向かった。






「……はぁ。」




部屋に入ったあたしは、ため息をこぼす。



たった少し会話を交わしただけなのに、すごく緊張していた。




これからもっと大事なことを話すのに、大丈夫なのかな…。




不安はよぎるけど、ぐずぐずなんてしていられない。



ちゃんと聞かなくちゃ、いけないんだから。




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