光を背負う、僕ら。―第1楽章―
最近の先生は、ずっとこんな調子だった。



最近と言うのは、あたしが東條学園の体験入学に申し込みをした後からのこと。



それ以来先生はあたしを見る度、さっきみたいに優しい笑みを向けてくる。




よっぽど、嬉しいのかな。



あたしが東條学園に興味を持ってくれたことが、そんなにも…。




不思議でならなかった。



どうして先生が、ここまであたしにこだわるのかが。



先生はあたしの才能を見込んで、東條学園を勧めてくれた。



だけど同じピアノの才能なら、小春ちゃんの方が数倍も上回っていると思う。



おまけに小春ちゃんはピアノのレッスンも受けている。



どう考えても期待を込めて東條学園に勧めるべき人は、小春ちゃんじゃないかな……?



いくら小春ちゃんが自ら東條学園の体験入学に申し込んだとしても、それはそれで終わる話。



わざわざ躊躇しているあたしに、あんなに強く勧めなくてもよかったのに……。




先生の目的や意志がよくわからなくて、何度もそう考えた。



だけどその反面、先生のこの行動は感謝すべきものでもあった。





< 345 / 546 >

この作品をシェア

pagetop