光を背負う、僕ら。―第1楽章―
「ねぇ、どうしておかあさんは、あたしがお腹の中にいる時、つきのひかりを弾こうと思ったの?」




素朴な質問。

些細なことでも、“月の光”に関することが知りたかった。




「そうねー…。“月の光”が、好きだったからかな?」




お母さんはとても優しい笑顔を保ったまま続けた。




「お母さん、すごくこの曲が好きなの。聞いていると、すごく落ち着くから。…そんな曲を、お腹の赤ちゃんにも聞いて欲しかった。きっと赤ちゃんに、この曲のように優しくて落ち着いた子に育って欲しかったのね。」




そう言ったお母さんこそ、“月の光”のような人柄をしていた。



優しくて、落ち着いていて、すごく温かくて。



今のお母さんからは少し想像出来ない人こそ、あたしが大好きなお母さんだった――。




そんな大好きなお母さんに無邪気な笑顔を向けてあたしが言う。




「だったらあたし、そんな人に慣れるように頑張るね!」




そう言って目の前にあるピアノの鍵盤に指を伸ばした。





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