倒錯夜話(センチメンタルナイトホラー)
その日からA子は真昼に軽蔑の言葉を吐き、なじるようになった。

幾重にも悲しく傷ついた。

それからトモが卒業の日が来た。

元々はトモが好きだったから、ずっとA子の応援を健気にしてきた真昼だったが、最後の夜なら私と踊ってとトモと踊り、

「お別れのキス……一度でいいからして欲しい。」

と、勇気を振り絞ってトモに言った。

トモは、

「キスできるけど、二人の友情を壊すから出来ない。」

そう言われた。

その後に真昼の応援で、トモとA子がキスをした。

真昼は、


「良かったね!」


と言いながら、


「酔っちゃったから先帰る。」


と、金を置き、店を出て知らない道を走った。

そしたら店から追い掛けて来た、その日初めて会った男の人が、


「君はいいのか!」


そう言った。


「何の事よ!」


そう言う真昼に、


「君だってトモが本当は好きなんだろ!?
なのに、あの友達の為に!
健気で、痛々しくって見ていられなくて、君をこのまま帰せないよ!」


いい人だなあと真昼は思ったが、


「私はトモなんて少しも好きじゃない!」


と、叫んだ。


涙を浮かべた真昼を、その人はガソリンスタンドの壁に押し付けてキスした。



「何するのよ!」



「ごめん……。
君と付き合いたい。」



「私の事なんか、なんにも知らないくせに!」



「ごめん……俺は多分君より年上だから、送ってく。」



「嫌!」



「こんなに酔ってほっとけないよ。」


と、タクシーを拾い乗せてくれた。
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