空になりたかった海
「光…ねぇ、光って名前なの?」


その人が私の名前に反応したのを見て、私は「彼女がそうなんだ」と確信した。


不思議と心が落ち着いてくる。


私は、頭を下げると

「すみません。ウチの勘違いでした。失礼します」

と言うやいなや、紗耶香の手をつかんで走り出した。


彼女が何か言っているが、私は聞こえなかったことにしてひたすら走った。



角を曲がったところで、ようやく足をゆるめた。汗が噴き出してくる。
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