【大賞】六天ニ花雪ノ舞フ
じいじいと、やかましく、蝉が鳴く。

じんわりと噴き出した汗が、肌を伝って落ちていく。

1945年。

終戦を迎えたばかりの夏。

見上げれば、憎いほどに晴れ渡った空が、不安になるほど広がっていた。

瓦礫の山と化した首都の町に、立ち尽くして。

少女は、ひとりだった。
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